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自分の好奇心を最大限働かせて学び、自分自身の問いを探求しましょう

石川 与志也  准教授
専門分野:臨床心理学、精神分析的心理療法、青年期臨床

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メッセージ

約100年前のウィーンにおいて、フロイトは自分自身の分析や患者さんとの治療的作業を通じて、人間の心の世界の広大さと複雑さ、奇怪さと豊かさを、驚きをもって探求しました。理系と文系という形式的な区別をすることなく、自分の好奇心を最大限働かせて学び、自分自身の問いを探求しましょう。好奇心旺盛な皆さんと共に学び、真理の探究をすることを楽しみにしています。「答えは好奇心を殺す病である」(W.R.Bion)

授業の紹介「青年心理学」

    授業で学べること

「青年心理学」では、青年期の心の揺らぎと危機、アイデンティティ獲得のプロセスをどのように理解できるのかを探求します。特に、精神分析的な発達理論を基盤として、現代社会において青年の心がどのように発達するのか、どのような難しさに直面するのかの理解を深めます。

    青年期とは

青年期は、子どもから大人になる移行の時期です。思春期の身体の変化に始まり、自分とは何者かというアイデンティティの模索をしながら、社会の中で一人の大人として生きていけるようになるまでの時期です。かつては10代後半もしくは20代前半ぐらいまでを青年期と呼んでいましたが、最近では30歳ぐらいまで、さらにはもう少し後まで続くとも言われています。

    青年期の長期化について

この点については、多くの要因が複合的に関連しており、様々な観点から検討する必要があります。ここでは社会環境の変化という観点絞って考えてみたいと思います。現代社会は、社会のグローバル化とIT 機器の発達によるコミュニケーション形態の変化が急速に進み、経済性と効率性が重視される社会になっています。インターネットでクリックすれば欲しいものが買え、LINE を送ればすぐに誰かに繋つながれる(という錯覚を持てる)便利な社会になってきている一方で、欲求不満に耐えられず、自分の欲求がすぐに満たされることを求める社会になってきています。しかし、私たちの心が成長するためには、すなわち、私たちが大人になるためには、欲求不満に耐え、自分の心と頭を使って考え、自分から他者に働きかけていけるようになることが大事になります。それは、フロイトの言葉を借りるなら、「愛する能力と働く能力」を身につけることとも言えます。先ほどお話しした社会環境の変化は、このような能力を身につけることを難しくしており、それが青年期の長期化の一つの要因と考えられます。

    授業の形式

授業では、まず青年期の発達や青年期に起きる危機に関してこれまでの研究によって得られた知見を学びます。それと同時に、私自身の臨床経験や研究を通して私が掴つかんでいることをお話し、学生の皆さんが感じ考えていることを発言してもらい、ディスカッションすることを通して、現代の青年の心について共に探求します。学生には、現代の青年に起きている現象について自分の問いを立て、学期を通してその問いを深め、学期の終わりに自分の問いに対するその時点での答えを最終レポートとしてまとめてもらいます。

    自分の問いを立てるためには

自分の問いを立てるためには、まず自分が感じた違和感に留まってみることが大事です。皆さんも何か引っかかる、何か気になると思うことは多々あるのではないでしょうか。先生はこう言っているけれど本当にそうだろうか、授業で学んだ理論はどうもしっくりこない、いま若者の間で流行っているこの現象がなぜか気になる、などの引っかかりを感じることがあると思います。その引っかかりを大事にし、それをしばらく心の中に置きながら授業を受け、先生や仲間と対話をし、日々の学びを進める中で、1つか2つ、自分の問いが育ってくると思います。このように自分の問いを立てて、それを探求するおもしろさを体験できるようになることが、このクラスの一つの目標です。

模擬授業「青年心理学入門ー大人になるってどういうこと?」

わたしたちは、どのような変化を経て、子どもから大人になるのか。精神分析の発達理論をもとに考えます。

https://youtu.be/PK8x9DR-YUU

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