学長メッセージ

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一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみ、
一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。
(コリント一、12章26節)

新型ウイルスの脅威も、ようやく収束の兆しを見ているように思いますが、まだまだ不安を抱えている方も多いことでしょう。感染対策は、経済的活動に大きな影響をもたらしましたが、それ以上にさまざまな行動の制限によって、人間が生きることのために大切な何かを失わせてきたように思います。

卒業生たちが働く病院や施設では、利用者にとって大切な交わりや家族との面会、またボランティアの方々の協力を得ることなどが難しくなったことなどが聞こえてきます。人と人との関係が希薄化する現代社会の課題が、社会的に弱い立場の方々や、そこに働く援助職に集中的に現れてしまっているようにも思うのです。さまざまな困難と苦しみが顕在化してきています。

もちろん、こうした中であっても、私たちに得られたもの、工夫されたこともあって、一つひとつ大切な経験となっています。そして、もしかしたらこれまでは気づかないままで過ごしてきた、誰かの痛みや苦しみを、私たち自身の痛み、将来への不安、また生きることの課題として感じ取っているのかもしれません。「共に生きる」という最も根源的なことに触れているに違いありません。他者の痛みも悲しみも私自身の痛みや悲しみとなる。喜びも感謝も共にする。一人ひとりの尊厳を守り、共感とケアを生きるように私たちはつくられているのです。

ルーテル学院は、対人援助の知識や技術のみならず、人間そのものを深く学び、「共に生きる」力を身につけていただける大学です。みなさんをお待ちしています。


ルーテル学院大学
学長 石居基夫

学生の皆様へ

生成系人工知能について~実践的思考力を高めるために~

今、話題の生成系人工知能、AI。急速に開発と実用化が進み、誰でも手軽にこの先端技術を手元に持ち、利用することができるようになりました。これからの社会において、AIの活用が当たり前となることでしょう。そして、これまで人間によって担われてきた多くのことが人工知能とロボットに取って代わられることが予想されています。

もちろん、大学での教育や研究でもAIが利用されることが多くなってきますし、本学の専門領域としての社会福祉や臨床心理の研究において、また対人援助の現場でもこうした技術が利用されるようになることは間違いありません。それだけに、今を生きる私たちは、この新しい技術についてよく知ることと習熟することが必要だと思います。

ただ、一方でこの生成系AIは倫理的問題を含めて、まだまだ開発途上の中でさまざまな課題があることも知られている通りです。本学では、こうした新しい課題も含めて、そのリテラシーや倫理についてデータサイエンス関連科目において学生の皆さんに学んでいただけるように整えています。

さて、本学での学びということにおいて皆さんに考えていただきたいことがあります。もちろん、提出の課題やレポート、卒業論文などは本人の執筆によらなければなりませんし、コピペではなくても、自らの力によって書かれたものでないものを用いるならば、それは不正行為にあたることは言うまでもありません。しかし、何より考えていただきたいことは、本学での対人援助の専門性の学びにおいて大切にしたいことについてです。援助の現場においては、具体的な他者と出会い、相手に傾聴し、寄り添い、専門的な視点(知識や技術など)から必要で可能な支援を見出し、また作り出していくことが求められます。その時には、相手とのさまざまな言語的、非言語的なコミュニケーションによって全人的に相手を理解し、問題をとらえ、分析し、解決のための支援のプログラムなどを論理的に組み立て、繰り返しその取り組みについて批判的検証を行ったりする実践的思考力が必要となります。その実践力を培うための学習と研究の場では、何よりも自らの言葉の力を養わなければなりません。AIを利用したとしても、その利用の状況についても明らかにしながら、自らの言葉に責任を持って取り組むことが、本学での学びには欠かせないということを考えていただきたいのです。

ルーテル学院大学での学びにおいて、生成系AIの利用については、これらの点について心に留めておいていただければと思います。

2023年6月22日
ルーテル学院大学
学長 石居基夫
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