2020年11月25日 チャペルメッセージ

「パイプオルガンの響き」河田優

使徒言行録 2:44-47
44 信者たちは皆一つになって、すべての物を共有にし、 
45 財産や持ち物を売り、おのおのの必要に応じて、皆がそれを分け合った。 
46 そして、毎日ひたすら心を一つにして神殿に参り、家ごとに集まってパンを裂き、喜びと真心をもって一緒に食事をし、 
47 神を賛美していたので、民衆全体から好意を寄せられた。こうして、主は救われる人々を日々仲間に加え一つにされたのである。

 
マルティン・ルターは音楽について次のように言い表しています。「音楽は神からの賜物である。私は神学に次ぐ第二の地位、そして最高の栄誉を音楽に与える。」
 
今日はオルガンの話をします。私たちのチャペルには素晴らしいオルガンがあります。このパイプオルガンには正式な名称があります。それは「北尾幸子記念パイプオルガン」です。
 
北尾幸子さんは2016年にこの世を去りましたが、最後にこのルーテル学院にパイプオルガンが設置されることを願って、ご自分の遺産を贈りたいと本学理事長の松澤員子先生に申し出てくださったのです。
北尾さんはクリスチャンオルガニストとして、関西のとあるミッションスクールで教えておられましたが、幼いときはルーテル教会のこども礼拝に通っていたそうです。その時に与えられ、培われてきた信仰により、生涯をキリスト者として歩めたことに喜び、幼い時代を過ごしたルーテルと同じ名前を持つこのルーテル学院にパイプオルガンを寄贈することによって、その感謝を表わそうとされたのです。
それはルターの信仰を受け継ぎ、牧師を目指す神学生に、また「キリストの心を心」として他者援助のために学ぶ学生たちに本当のオルガンの音を聞いていただき、その音に表される神の恵みの深さ、豊かさに触れていただきたいとの思いでした。
 
この北尾幸子さんの思いを知った本学の後援会の方々がその思いに打たれ、全国に募金を呼びかけました。そこでさらに多くの方たちから募金が寄せられました。本学の教職員や学校関係者の方も募金を寄せ、中には多額の献金をしてくださった方もありました。
結局は当初の計画から2倍から3倍にかけての献金が集まり、最終的に日本を含め世界でも大きな実績を持つ、マルク・ガルニエ・オルグ・ジャポンに制作を依頼し、このように素晴らしいパイプオルガンが設置されたのです。
 
パイプオルガンの音色を定めるストップ数は14、手鍵盤のメインケースと足鍵盤のペダルケース合わせて839本のパイプは9オクターブの音を奏でます。足鍵盤のパイプは隠されていますが、長いパイプは6メートルもあるそうです。
製作に当たったガルニエ工房の職人さんたちは、このチャペルを数か月占領し、パイプオルガンの制作に取り掛かります。何故かというと、このチャペルの構造に合わせて一本一本のパイプの音を調整していくからです。職人さんがパイプを口に当ててブーと音を出す、それがこのチャペルでどのように響くのか確かめつつ、パイプの笛となる部分を微妙に調整していく。さらにそのように手をかけて調整されたパイプを設置し、今度は全体のバランスが取れているかをしっかりと聞き取り、そこで見事な調和が出るまで手を加え続ける。そのような作業を毎日毎日繰り返すのです。
ですから本学のパイプオルガンはこのチャペルにしかない唯一のオルガンと言えるのです。
 
先ほど読んでいただいた使徒言行録には、イエスが天に昇った後で始まった教会のすがたが表されています。
イエス・キリストを信じる人たちは、みなそれぞれの持ち物と持ち寄り一つとなり、神様を賛美していたと記されています。この人たちの輪はどんどんと広がっていきました。最初は小さな輪であったものが、どんどんと大きくなり、一つになっていったと聖書に記されています。
 
そして2000年前に起こったこの出来事は、長い時間をかけて、今この日本の中でも起こっていると言えます。
一人の信仰者の思いを支え、受け継ぐように、多くの方々がたくさん捧げてくださった。それがこのオルガンの839本のパイプとなって、それぞれが違う音を奏でながら、調和された一つの音楽として神様への賛美を奏でている。このオルガンの音には主のもとに人々の信仰が集められ、一つとされていく。そこに働く他ならない主の業が証しされているのです。
 
どうぞ皆さんも、これからもなおチャペルに集い続けていただき、オルガンの音を聞き、私たちの思いを一つにされる主の働きに心を傾けていただきたいと思います。
何故ならばあなたもこの場に招かれている一人なのです。


2020年11月5日
チャプレン 河田優

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