2021年5月10日 チャペルメッセージ

キリスト教月間礼拝「希望ある明日に向かって歩むぞ」市川一宏

聖句「わたしは、既にそれを得たというわけではなく、既に完全な者となっているわけでもありません。何とかして捕らえようと努めているのです。自分がキリスト・イエスに捕らえられているからです。」フィリピ第3章12節 
今日は、この1年の経験を通して私が学んでいる2つのことをお話をします。それは、第一に、聖句に書かれている「何とかして捕らえようと努めていること」と、第二に、「自分がキリスト・イエスに捕らえられていること」です。
 
2020年4月2日午前8時、ニューヨークにいる卒業生の岩間さんよりラインが届きました。そこには、ニューヨークにおける医療現場の厳しさが書かれていました。
 
「私は今、マンハッタンのMount Sinai Hospital と言う大きなhealthcare system の中の一つのHospital のCOVID ICUで働いています。死者が増え、霊安室も一杯でご遺体を置く場所もありません。ICU(集中治療室 (Intensive Care Unit))ベッドもICUナースも足りないし、人工呼吸器も足りません。自分の身を守るためのマスクやガウン、フェイスシールドなども不足して、自分の身も守れません。まさに、戦場下です。数週間前までは普通に生活をしていたのに、人間の生活ってこんなにまで急に変わってしまうのですね。こんな時ですが、いつも私が神様に願っていたこと「神様のために私を用いて下さい」と言うことが、もしかしたらこれなのかも知れません。・・・・・。」 
 
私は、そのラインを受けて、心配で激しく心が揺さぶられました。そして、ニューヨークにいる岩間さんを支えるために何ができるか、悩みました。そこで、私と繋がっている卒業生に対して、メールやラインで以下の文章を送りました。「1992年度卒業の岩間さんから、ラインが届きました。励ましのメッセージを送ろうと思います」
 
そのラインを受けて、たくさんの卒業生から私に岩間さんへの励ましのメールやラインが届きました。2日後、それをまとめて岩間さんに送りました。
 
「市川先生、ルーテルの皆さんからのメッセージを一つひとつ大切に読ませて頂きました。涙が止まりません。皆さん、本当にありがとうございました。そして、多くの方の祈りに支えられて私の毎日があるのだと思いました。皆さんの祈りを大切にこれからも頑張っていきます。どうぞ、これからも私たちのために祈ってください。(略)私も皆さんの祈りに支えられて頑張っていきます。本当にありがとうございました」
 
岩間さんは、今も元気で、病院での仕事を続けながら、大学でも教え、昨年の12月には、社会福祉原論Ⅱの授業を1コマ、ニューヨークからzoomで行って下さいました。
 
また、岩間さんとの連絡を契機に、卒業生や大学関係者による「希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ」が始まり、岩間さんとのメッセージを含めて、80近いメッセージが市川一宏研究室に掲載されています。児童養護施設、老人福祉や障害者児福祉の現場で働いている卒業生が、利用者の方々の支援を通して、明日への希望を書いています。児童養護施設で子どもの生活を支えながら、コロナから守り、そして子どもたちのために祈るメッセージ。癌センターに入院している高校生が感染予防のためになかなか家族と会えず、また家族も子どものことを思い続けているその現実にあって、日々共に歩んでいる思いを綴ったメッセージ。それらのメッセージを読み、私は、勇気づけられています。
 
正直に申し上げると、今、何をすべきか、私自身、日々迷いの連続です。確信できることを捕らえようと日々努めています。しかし、コロナ禍における困難な時に大切なことが見えてくる。困難を感じていない時に気がついていなかったが、大切であったことが分かってくる。確かに、コロナウイルスの広がりは、今までの関係を打ち砕き、不安、恐怖、不信、怒りを生み出し、負の連鎖が広がってきています。しかし、だからこそ、絆、「人への思いやり」の大切さが分かる。私は「絆」「人への思いやり」を守り、強めたいと思っています。それが、「何とかして捕らえようと努めている」現実です。
 
また、私は、コロナを通して、私がキリスト・イエスに捕らえられていることを学んでいます。嵐の中にあって、増水した川に流されそうになる時、流れないように私の手を離さない方がおられる。立ち戻る場を、自分が疲れを癒やし、回復して新たに歩む場を私たちに与えてくださっている。私は、「自分がキリスト・イエスに捕らえられている」ことを実感しています。
 
私たちは、今を、そしてこれからをどのように生きていくか、コロナに試されているのではないでしょうか。私は、これからも、卒業生や関係者の方々と、「希望ある明日に向かって歩むぞメッセージ」を書き続けていきたいと思っています。
 
神に感謝。

2021年4月20日
市川一宏

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